しゃぶしゃぶミルク

アグー豚は脂が美味い品種だ。他の豚に比べて脂の融点が低く、さっぱりとしながら甘みがあり舌触りもいい。なので食べ方も、さっと温めてその甘さを噛みしめるのが極上だ。この店のアグーしゃぶしゃぶは、私が知るなかで最もアグーを美味しく食べさせる店だ。

まずその出汁が素晴らしい。アグーから丁寧にとった出汁は金色に澄んでおり、動物的な臭さが一切ないにも関わらず、上品かつ濃厚な旨さに溢れている。これを火にかけ、沸騰したところでアグーを投入する。軽く熱が入ったところで引き上げるのだが、オススメは箸で包むように持ち上げ、なるべくスープも合わせて取ることだ。スープは減ったら追加してくれるので心配ない。

予め生卵をしっかり目に溶き、そこに大量のコショウを入れる。信じられないくらい大量にだ。こんな入れたらコショウの味しかしないと、と自分が感じる倍の量を入れよう。そこに鍋からあげたアグーをざっとつけ、そのままかきこむ。器を置いて上品に食べてちゃダメだ。ずるっと生卵とスープとをかきこむように食す。するとスープの旨さとアグーの甘さとコショウの辛さが渾然となり舌から鼻腔を襲ってくる。気がついたら飲み込んでいるに違いない。消化にいいのかわからんが、これは飲み物だ。

あとはこれをひたすら繰り返す。わんこ蕎麦を食べるように。申し訳ないが、大事な話はアグーを食べ終わり野菜を入れるタイミングまで待ってもらいたい。ここで大事なのはアグーを最高の方法で美味く食べることだ。

1皿のアグーはすぐに無くなると思う。その前に生卵がなくなってるはずなので躊躇せず頼もう。お肉も追加できるし、出汁もいつでも追加してくれるので、遠慮なく追加しよう。だいたい私はをお肉をもう1人前、生卵を2つは追加する。ああ、そうだ、特段にラフテーが食べたいのでなければ、5400円のセットではなく4200円の単品でよいと思う。その分、お肉を追加し、しゃぶしゃぶを堪能するのをオススメする。

最初にこの店に伺ったのはまだ沖縄市の泡瀬にあったころで、片道1時間近くかけ、帰りは代行に1万円近く払っていた。それが那覇の若狭に移り10年、さらに今回3階建ての大所帯に移転した。開店当時と同じメニュー、同じ食べ方で、当時からこれは素晴らしいアグーの食べ方だと思っていたので、こうやって成長されて多くの人に楽しんで貰えるようになってとても嬉しい。

沖縄にはアグーをしゃぶしゃぶで食べさせる店がいくつもある。有名なところもあれば、有名じゃないけど美味しい店もある。ただ、アグーはこの食べ方が最上で、それはこの店でしか楽しめない唯一無二だ。もし沖縄に来て1回しかアグーを食べないのであれば、この店をオススメする。